2008年02月14日

楽園への道

 池澤夏樹さんの個人編集による世界文学全集の第二巻目は南米チリの作家、バルカス・リョサの最新長編『楽園への道』だ。

 バルカス・リョサの小説を読んだのは、これがはじめて

 19世紀の半ば、女性解放運動と、労働者の団結を勧めるために、フランス中を遊説して回った、ほとんど先駆的な活動をした女性がいた。

 その名を「フローラ・トリスタン」スカートをはいた煽動者exclamation。資本家やその手先の警察に迫害されながらの教宣活動は、あまりに強行軍のために、寿命を縮め、わずか41歳で亡くなる。

 その4年後に彼女の薄幸の娘から生まれたのが、「ポール・ゴーギャン」芸術の殉教者爆弾

 35歳の時に、ブルジュワの生活を捨て、画家になってしまった男。生活は困窮し、周囲からは反社会的かつ不道徳の烙印を押されるが、ゴーギャンはひたすらに絵を描く。

 やがて、ヨーロッパ文明を否定し、文明の破壊から免れた、原始の生活が残る地を求めて、彼は、ポリネシアへと向かい、悲惨な生活を続けながら絵を描くのだ。

 祖母と孫。このふたりの時代の反逆者を、一章ごとにパラレルに並べて辿り、決して辿り着く事がない楽園への道程を、リョサは、愉楽の文で描く。

 まさに小説を読むことの愉楽を、この本を読みながら感じていた。

 バルカス・リョサの小説を読んだのは、これがはじめてだけれど、これほどの作家を、今まで読まなかったのを、自身に恥たほどだ。

 長編小説の厚みを、十分に楽しんだ。小説は、読んでいる間にしかないと言ったのは保坂さんだけれど、とりわけその説は、長編小説に当てはまる。

 ぼくはこの文で、単なる概要しか言えない。そうして概要なんて、なにも言っていないのと、同じだ。

 「楽園への道」の面白さを理解するには、ただひたすら、読むしかない。読みながら、読むことの愉楽を感じるしかない。

 廃業しようが失業しようが、小説は面白い。

 
ニックネーム ikkou at 21:58| Comment(2) | 日記
この記事へのコメント
おひさしぶりです。

ゴーギャンはずっと前から好きな画家。高校の時、京都でゴーギャン展があって、見に行ったのを思い出します。

もっともゴーギャンについて具体的に知識があるわけでなし、「ゴッホの手紙」と「月と六ペンス」以上の知識はない。

ゴーギャンの祖母にこんな人が居たなんて知りませんでしたね。魅力的な本です。
Posted by ロビタ at 2008年02月14日 23:32
ロビタさんは、ゴーギャンの絵が好きだったんですね。

ぼくもこの本を読むまで、
ゴーギャンの祖母が、先駆的な女性解放運動家だなんて、知りませんでした。

長い小説でしたが、読んでいる間、ワクワクしていました。

リョサの書き方が、良かったからでしょう。
ふたりの主人公に、呼びかけるように書かれています。

いづれにしても、このふたりに共通する魅力は、どんな逆境になっても、自分の意思を曲げなかった事ですね。
誰からも正当な評価を得られなかったのに、自分の意思だけは曲げなかった。
はたから見れば、不幸な境遇のようにしか見えなかったのに、不遇のうちに亡くなったように見えるのに!
Posted by ikkou at 2008年02月15日 21:14
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