おふくろと、娘と息子とぼくの4人で。
天気のよい日だった
桶に水を汲んで、墓を洗い、花を添え、お線香を上げて、手を合わせた。
子供たちをお守り下さいって
帰りにファミレスに寄り、おふくろにご飯をおごって貰った。
それから家に帰り、ぼくは歩いて本屋に行った。
目当ての本は、すぐに見つかった。村上春樹訳のレイモンド・チャンドラー作『ロング・グッドバイ』
ハードボイルト小説の古典的名作として名高いけれど、ハードボイルドを読まないので、ぼくはまだ読んだことがなかった。
購入してカバーを掛けてもらい、そのまますぐ側の公園のベンチに座って、読みはじめる
暖かいとはいえ、まだ春先だ。ベンチに座って読んでいると、いささか身体が冷えてきたので、本を閉じて、帰ってくる。
家には娘だけがいて、息子と息子のエレキギターは消えていた。どうやら友達の家に練習に行ったらしい。
畳みに寝転んで、続きを読む。
とても長い小説なので、その日は282ページ目で止めて寝る。
よく木曜日も、仕事から帰ると、やることをやって本の続きを読む。それでもとても長いので、まだ読み切れない。あきらめて寝る。
金曜日の今日も、仕事を終えると、やることをやってから、続きを読み、今さっき、読了。
主人公にして語り手の私立探偵フィリップ・マーロウ。こいつのクールな語りが、この小説の魅力の全て
しかし本筋よりも、マーロウの生活の細部の描写が、こちらをそそる。マーロウとは何者なのか。都会のはぐれもの?
この生き方のスタイルが、男心をくすぐるのかも?
大金持ちの美貌の女から、結婚を迫られる。「あなたのために世界を買ってあげることもできるわ。もしもそんなものを手に入れるだけの価値があるとすればだけど。…あなたにあるのは小さなみすぼらしいオフィス。そこに座ってお客がくるのを待っているだけ…」
マーロウはやんわりと断わる。女は泣き出し、シャンパンをマーロウの顔にかける。そうしてあきらめ、さよならを言う。
さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ。
ロング・グッドバイ
ウヒャー

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